福岡ハレ系 放課後クラブ

トクヨク・ヘルス(イメクラ/中洲・キャナルシティ周辺)

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投稿!!写メ日記
1件~30件(全30件)

榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
部活作るってよ(3)

職員室の前で私は少しだけ立ち止まっていた。

うーん、と小さく息をつく。

三人。

頭の中でその数字が何度も繰り返される。

一人はいる。私。
でも、あと二人。

思っていたより遠い。


廊下は静かで、遠くで足音だけが混ざっている。窓の外はもう暗くなり始めていて、昼間とは違う時間の流れになっていた。

どうやって集めればいいのか。
考えても、すぐに答えは出ない。

そのときだった。


まただ、と思う。

私の円の中にスッと入り込んでくる感覚がある。振り返るまでもない。

同じクラスの男子。名前は確か、山田。

かなりの念能力の使い手だ。


振り返ると、やっぱり少し離れた位置に立っていて、こちらを見ている。視線が合うと少しだけ逸らす。でも離れない。

朝もいる。登校中、後ろに。
待ち伏せされていたこともある。

放課後もいる。帰ろうとすると少し距離を保ったままついてくる。

ずっと私のことを見ている。


……ということは。

部活に入っていない。



私は少し考える。
条件は満たしている。

ゆっくりと山田の方へ歩く。

距離が縮まるにつれて、山田の肩がわずかに緊張していくのが分かった。

「山田君」

名前を呼ぶと、びくっとした。

「え?」

少し遅れて、反応が返ってくる。


「部活、入ってますか?」

「え?あ?え?」

混乱している。


「入ってないですね」

そう言うと、山田は少し間を置いてから、

「……はい」

と頷いた。


やっぱり。
私はそのまま続ける。

「一緒に部活をやりませんか?」


山田の動きが完全に止まる。

「え?あ?え?あ?え?あ?え?」

思考が追いついていないのが分かる。


少しの間のあと、

「………はい」

と、小さく答えた。


承諾。私は手を差し出す。
山田も少し遅れて手を出し恐る恐るそれに触れる。

握手。

その瞬間、空気がわずかに変わる。

見えない何かが確かに結ばれた感覚がある。

これは、約束。
言葉を交わしただけでは終わらない、逃げられない形のもの。互いに、それを守るための念。

約束を共有する念能力。

その名は——

「ヨロシクオネガイシマス」


手を離しても山田はまだ少し固まっている。


でももう決まっている。


まだ何も決まっていない部。
現在、部員数2人。





そうだ、と思う。

新しい部員ができた以上そのまま帰らせるわけにはいかない。私は山田の方を見る。

「山田君、もう遅いので送りますよ。一緒に帰りましょう」

山田は少しだけ固まってから、

「え?」

とだけ返した。

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
部活作るってよ(2)

その日の放課後。

昼休みとは違って廊下は静かだった。
部活に向かう足音が遠くに流れていくくらいで、さっきまでのざわめきが嘘みたいに消えている。

窓の外は少しだけオレンジ色で
時間がゆっくりになったような気がした。

私は職員室のドアの前で一度止まる。
ここに来る理由はある。

部活を作る。そう決めたから。


軽く2回ノックをして扉を開ける。

「失礼します」

紙とインクと、少し古い空気の匂いがした。

「どうしました?」

顔を上げたのは戸田教頭だった。
相変わらず、忙しそうな顔をしている。

「あの、部活を作りたいです」

言うと、少しだけ間があいた。 

「……部活ですか?」

「はい」

「何部ですか?」

私は少し考える。
そういえば決めていなかった。

「……これから決めます」

戸田教頭はゆっくり頷いた。

「なるほどね。部活というのはですね、学校教育の中でも非常に重要な位置を占めていてですね。」

早い。言葉が速い。

「単なる課外活動ではなく、生徒の自主性や協調性を育てる場でもあるわけで。例えて言うとラグビー部なんかは顕著で、チームワーク、規律、体力、そういったものが総合的に養われるんですよね。」

一文が長い。

「で、体力といえばやっぱり筋トレですよ」

急に話が変わった。

「筋トレはね、裏切らないんですよ。やった分だけちゃんと返ってくる。これって実はすごいことで。」

戸田教頭の声が、少しだけ楽しそうになる。

「スクワット、ベンチプレス、デッドリフト。この三つが基本です。特にスクワットがおすすめです。下半身はすべての土台なので。」

私は聞いている。
たぶん。

「最初は自重でよくて、フォームを大事にしてください。そして毎日少しでもいいから続ける。」

部活の話はどこに行ったんだろう。

「最近筋トレしかしてないんですよ」

戻ってこなさそう。
私は少しだけ視線をずらす。

窓の外が少し暗くなっている。
ここに来てどれくらい経ったんだろう。

「……というわけで。部活を作るなら条件があるんですよ。」

私は顔を上げる。


「最低三人、人を集めてください。顧問も必要だし、申請も必要だし、色々手続きはあるんですけど」

三人。

「まずは人数が必要で」


私は少しだけ考える。
頭の中で数える。

一人(私)。

それで終わる。


「……三人も必要なんですか」

「一人じゃ部活とは言えないですからね」

そうかもしれない。でも三人って。
そんなに集められる気がしない。


職員室を出てドアを閉めた。
廊下はさっきより静かになっている。

外はもうほとんど夜だった。

三人か。思っていたより遠い。
部活を作るってそんなに難しいんだ。

私は廊下を歩きながら少しだけ考える。
あと二人。どうやって集めよう。


まだ何も決まっていない部。
現在、部員数1人。

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
部活作るってよ(1)

昼休みの教室は、弁当の匂いと笑い声で満ちている。誰かが机を引く音、椅子が床をこする音、遠くで誰かが名前を呼ぶ声。それらが全部混ざってひとつの大きなざわめきになっている。

その中で、私はひとりページをめくっている。

紙の感触。
指に少しだけ引っかかる、あの質感。

『ムー』
世界の謎と不思議を扱う月刊誌。

古代文明、超能力、宇宙人、未確認生物。
証明されていないことばかりが並んでいるのに、不思議と嘘っぽくはない。

むしろまだ名前のついていない「何か」に触れている感じがする。


今読んでいるのは、東北で目撃されたユーマの特集だった。

夜の山の中。黒くて細長い影。
人のようにも見えるし、違うようにも見える。

熊ではないらしい。
人でもないらしい。

じゃあ、なに。

ページをめくる。


ぼやけた写真。不鮮明な輪郭。
こういう曖昧なものほど、気になる。

はやく続きを。


「榊ノ下さん!」

声が飛んできた。

顔を上げるとラグビー部だった。
まただ、と思う。転校してきてすぐから何度も声をかけられている。

「見てるからね!毎日パンくわえて走ってるでしょ!」


朝、時間がなくてただ走っているだけなのに。


「ラグビーやろうよ!」


パンとラグビーの関係もよく分からない。


私はまたページに目を落とす。

「え、聞いてる?」

聞いている。ちゃんと聞こえている。
でもユーマの方が気になる。


「…考えときます」

口だけで答える。本当は考える気もない。

私はページをめくる。

黒い影。説明文。
目撃者の証言。

どれも決定的ではない。

だからいい。


「今日も練習あるからさ!待ってるね!」

私は何も言わない。

「…また来るからね!」

ラグビー部は去っていった。


少しだけ静かになる。
私はまたページをめくる。

それにしても、しつこい。
どうしたらいいんだろう。

なんでそんなに部活に入れたがるのか。



そうか、私がどこにも属していないからか。



ページをめくる手を止めて少しだけ考える。


もし、どこかに属していたら。
もう声はかけられないんじゃないか。

勧誘される理由がなくなる。


…ん、それじゃあ。

入る必要はない。
作ればいい。



私は雑誌を閉じる。

ユーマの正体はまだ分からない。
でも、やることは分かった。


部活を、作ればいい。

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
番外編。あの日の出来事④

俺の名前は山田太郎。
食パンタワーを持った榊ノ下と角でぶつかったクラスメイトの男子だ。ちなみに数学は100点だった。

俺は最近、家を出る時間を30分遅らせている。
理由は単純だ。あの角でもう一度榊ノ下さえとぶつかりたい。ただそれだけ。



その一心で俺は毎朝あの角に立っている。別に待ち伏せじゃない。通学路が同じなだけだ。


もっとも毎日ギリギリまで待っているので最近は毎日遅刻している。当然、先生には毎日怒られる。

「山田!!また遅刻か!!」
「すみません」

数学が100点でも遅刻すると怒られる。この学校の評価制度にはまだ改善の余地があると思う。

そんなことを考えながら今日も俺はあの角に立っていた。

時計を見る。もうすぐ始業時間だ。
今日はもう来ないのだろうか。

そろそろ諦めて学校に向かおうとした、そのときだった。遠くからものすごい勢いで走ってくる女子高生が見えた。

大きなぐるぐるメガネ。見覚えのある髪型。
そして、胸に抱えられた巨大な黄色い物体。

榊ノ下さえだ。間違いない。

ついに来た。
だが、何かがおかしい。

榊ノ下は胸に北海道蒸しチーズケーキのクッションを抱えていた。

寝坊して慌てていたのだろうか。パンとクッションを間違えたのかもしれない。そういうところも可愛い。

俺は自然を装って角の少し手前に立つ。
距離を測る。速度を計算する。このままいけば、あと数秒で彼女と再び衝突するはずだ。

数学100点の俺に計算ミスはありえない。

しかし、そのときだった。

榊ノ下の背後に、もう一人走っている男がいることに気づいた。明らかに学校の生徒ではない男。

榊ノ下とまったく同じ速度で走っている。彼女が加速すれば、男も加速する。彼女が少し減速すれば、男も減速する。距離は一定。

……おかしい。
偶然、同じ方向に走っているだけだろうか。いや、それにしては妙だ。男の視線はずっと榊ノ下の背中に向けられていた。

俺がその男に気を取られていたほんの数秒。榊ノ下が目の前を通り過ぎた。

あっ待って。ちょっと待って。


榊ノ下は北海道蒸しチーズケーキを抱えたまま、ものすごい勢いで走り去っていく。ぶつかれなかった。

何やってんだ俺…


いや違う。重要なのはさっきの男だ。
あいつは一体何者なんだ。

すると男の右手に、何かが光った。刃物だった。男はそれを握りしめたまま榊ノ下との距離を急速に縮めていた。

その瞬間、俺はすべてを理解した。
あいつただの通行人じゃない。榊ノ下を狙っている。そして彼女はまだ気づいていない。

一気に血の気が引く音がした。
まずい。このままでは間に合わない。

俺はもう考えられなかった。
静かに息を吐き、そして全身に電気を巡らせる。

念能力。神速(カンムル)。

次の瞬間、俺の姿はその場から消えた。地面を蹴る音すら残さず、風を切って男との距離を一瞬で詰める。

男が刃物を振り上げようとした、その瞬間。俺は背後から男の首に腕を引っかけた。

「……!?」

男が振り返るよりも早くそのまま近くの路地裏へと引きずり込む。一瞬の出来事だった。


「ひっ……ひいっ!!」

男が情けない声を上げる。

「な、なんだお前!!いったいどこから……!!」


俺は男を見下ろした。

「ああ……」

制服の袖を軽く直す。


「癖になってんだ、音殺して歩くの。」


男の顔から血の気が引いていく。

「ま、待て!!俺はただ……!!」

その言葉が最後まで続くことはなかった。
路地裏に、男の悲鳴が響き渡った。




俺は路地裏から出て
何事もなかったように制服を整えた。

時計を見る。完全に遅刻だ。
今日も先生に怒られるだろう。
数学は100点なのに。

まあいい。

あの大きなぐるぐるメガネの奥にある秘密を、今日も守ることができたのだから。

俺は静かに学校へ向かって歩き始めた。


山田太郎。

特別な名は、ない。


ただ、ゾルディック家とは遠い親戚だ。



おわり
 

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
番外編。あの日の出来事③

俺の名前は山田太郎。
食パンタワーを持った榊ノ下と角でぶつかったクラスメイトの男子だ。ちなみに数学は100点だった。

だから俺は、わりと物事を論理的に考えるタイプだと思っている。あの日のこともちゃんと整理しようとしている。

感情じゃなくて、事実から。

まず、榊ノ下さえは転校生だ。

転校してきた理由はクラスの誰も知らない。
本人もあまり話さない。

次にいつもぐるぐるの大きなメガネをかけている。

視力が悪い、というだけでは説明がつかないサイズだ。あれは視界を狭めるための道具じゃないかと思う。

外界との距離を、意図的に取るための。


そしてあの日。

食パンタワー。
普通あんな量のパンを朝から持ち歩かない。

遅刻しそうだったとしても
一枚か二枚でいいはずだ。

なのに抱えるレベル。

あれは偶然じゃない。

ぶつかった瞬間メガネがなかった。

いつも隠れていた目が
そのまま見えてしまった。

あれは事故だった。
たぶん、見せる予定はなかった。


つまり。

榊ノ下さえは
本来の顔を隠して学校生活を送っている。

理由は分からない。

でも理由がない人間はあんな隠し方をしない。
クラスの端の席。静かな態度。
必要以上に目立たない服装。

それでいて
どこか余裕がある。

俺は黒板を見ながら、
考えていた。

数学の授業中だった。

100点を取ったあとの授業は
だいたいこういうことを考える時間になる。

榊ノ下さえは「普通の高校生活」を
演じているだけなんじゃないか。

もしそうだとしたら。
俺が見てしまったのはただの素顔じゃない。

設定が崩れた瞬間だ。


クラスの誰も気づいていない。

気づいていないというより気づけない。
でも俺は、見てしまった。

それが良かったのかどうかは
まだ分からない。

ただ一つ分かっているのは。

あれ以来、俺は無意識に
榊ノ下さえを目で追ってしまう。

ぐるぐるのメガネを見るたびに思い出してしまう。

メガネの奥にあった目。
あの日の一瞬だけ違った世界。


数学は100点でもこの件についてはまだ答えが出ていない。でも、簡単な問題ほど最後に解けることもある。


俺はそういうタイプだ。

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
番外編。あの日の出来事②

可動域広子のあの日の出来事。


朝の教室は昨日までと何も変わらない。
席に座って、前の子と話して笑っている。
普通の朝。

でもドアが開いた瞬間
空気が一瞬だけ止まった気がした。

榊ノ下さんが立っていた。

入口で、少し固まっている。
あ、と思い私は先に声をかけた。

「榊ノ下さん、おはよー」

自分でもちょっとだけ明るすぎる声だと思った。近づくと、榊ノ下さんは一瞬だけ身構えた。

昨日のことをまだ頭の中で整理してる顔。

「昨日はほんとごめんね。急にお腹めちゃくちゃ痛くなっちゃってさ。トイレから全然出られなくて」

言いながらこの説明
信じてもらえるかなって思う。
 

「一人にしちゃったよね」

少し間があって

「あ、はい」

って返事が来た。

声は小さくて
肯定でも否定でもない。

私はそこでなぜか確信してしまった。


あ、一般人の返事じゃない。

短いとかそっけないとかそういう話じゃない。短くしないといけない事情がある。

「あ、はい。」

この三文字ただの相づちじゃない。
私の脳内で勝手に翻訳が始まる。

「了解。これ以上の会話は不要」
「ここは安全圏ではない」
「余計な情報を出すな」


そうか。

榊ノ下さん、異国の工作員だ。
 

転校生という立場は目立たないための偽装身分。クラスに溶け込んでいるけど溶け込みすぎない絶妙な距離感。

あの返事は感情を消したんじゃない。
感情を管理している。

私は急に昨日の体育のことを思い出す。

お腹が痛くて、水の入ったバケツを蹴ってびしょ濡れで、首を変な角度に傾けて廊下を歩いていた私。

――いや、違う。

あれは私が勝手にやったことじゃない。

今なら分かる。


あれは全部
榊ノ下さんに仕組まれていた。
   

まず、急なお腹の痛み。
タイミングが良すぎる。

体育の途中。ペアを組んだ直後。
人目が多い時間帯。

ここで私を一人にする必要があった。

次に、水の入ったバケツ。

あんなところに
あんな都合よく置いてあるわけがない。

導線上に。走ると必ず蹴る位置に。

あれは罠だ。

びしょ濡れになったのも見た目を変えるため。
誰かに見られても「変なやつ」で処理されるように。

首を傾けて歩いていたのはたぶん私が混乱していたせいだけど、結果的に怪しさが完成してしまった。

つまり私は知らないうちに
異常な人物役を演じさせられていた。

そしてその一部始終を榊ノ下さんは
きっと遠くから見ていた。

だから今日の朝もあの返事だった。
 

「あ、はい。」

計画通り。
こちらは問題なし。
対象は予定通り攪乱された。

そういう意味だ。
全部つながってしまう。

昨日の体育も、今日の朝も、あの短い返事も。


私は「またね」と言って席に戻る。

でももう昨日の自分を
ただのドジだったとは思えなかった。

この教室には思っているより
ずっと大きな何かがある。

どうせ最初に異変に気づいたのは私だ。


それなら最後まで見届けるしかない。


首を回して周囲を確認する。
今日も視界は良好。

可動域は、最大だ。



おわり

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
番外編。あの日の出来事①

可動域 広子、あの日。

私の名前は可動域 広子(かどういき ひろこ)。
小柄で隠れ巨乳。性格はちょっとドジで明るくて首の可動域がやたら広い、可愛い女子高生である。


体育はペアを作る授業だった。
私は近くにいた子と組んだ。

名前は忘れてしまったけど
同じクラスの転校生だったと思う。

準備体操の途中からとんでもなくお腹が痛くなった。我慢できないやつ。

だから言った。


「ちょっとトイレ行ってくる」

その子は、うなずいた。

体育館を出て廊下を小走りに進む。

急いで角を曲がった拍子に、そこに置いてあった水の入ったバケツを盛大に蹴飛ばしてしまった。

水が漫画みたいに跳ね上がる。
顔。首。体操服。全部びしょ濡れ。

最悪、と思ったけど、
それどころじゃなかった。
お腹が痛い。とにかくトイレ。

一番近いトイレに駆け込む。

故障中 使用禁止。


少し先のトイレへ向かう。

故障中 使用禁止。

どういうこと?二つとも?
今日はそんな日なの?

意味がわからず
びしょ濡れのまま廊下を歩く。


歩き方は、たぶん変だった。

痛すぎるお腹をかばっているし
無意識に首を傾けていた。

さらに向こうのトイレに行こうとして
その途中で人影が見えた。

さっきペアを組んだ子。
思い出した。たしか名前は榊ノ下…さん…。

廊下の奥に立っている。
待たせたかも、と思った。


私は言った。

「まだ……トイレ、終わってなくて」

いつもの癖で首を傾けたまま。


その瞬間
廊下の電気が消えた。

ぱっと。

誰かの足音。どこかで悲鳴。

私も止まる。

すぐ非常灯がついた。
さっきまでいたはずの
榊ノ下さんはもういなかった。

結局トイレには行けなかったが
腹痛はなぜか急に消えた。

そのまま更衣室に戻って、私は着替えた。

首を回して、呼吸を整える。

体育は終わり。
ただそれだけの日。


あとで聞いた。

体育館の近くで「幽霊を見た」って
言ってる人がいたらしい。

髪が濡れてたとか、
首が変だったとか。

それ、多分私だと思う。

急にブリッジで追いかけてきた、とか。


……ん?
誰の話だ…それ。


帰りにローソンで盛り塩を買って帰った。

 

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
榊ノ下さえ、最終回。

全く眠れなかった。胃が痛い。
でも学校には行かないといけない。
重い気持ちを抱きながら通学路を歩く。


学校に着くと教室はいつもと変わらなかった。机の並びも、窓の外の色も、ざわつき方も同じで少しだけ安心する。

四時間目まで普通に過ごした。授業も受けるし、当てられたら答える。自分がここにいることに特別な意味はないみたいに。


昼休みになる。


鞄から弁当を出して箸を持った、その瞬間。


「榊ノ下、ちょっと来てください」


補習の先生の声だった。

教室の空気がほんの一瞬だけこちらを見る。
私は返事をして、立ち上がる。


二人で廊下を歩く。

昼休みの廊下は、思ったより静かだった。
遠くの教室から笑い声が流れてきて、どこかで椅子を引く音がする。ワックスの匂いと少し冷たい空気。

先生の靴音が一定の間隔で前を進む。
私は半歩後ろを歩く。


窓から差し込む光が
床の白い線を強くしている。

その線を踏まないように
いつもは無意識に歩幅を調整するのだけど
今日はそんなことをする余裕はなかった。


「あの……バイトのこと……ですよね?」

声は思ったより小さかった。


「んー?」

先生は振り返らずに
曖昧な声を出すだけだった。

それ以上は何も聞けなくなる。


私は下を向いて歩く。床の傷や消えかけたテープの跡ばかりが目に入る。


先生が立ち止まる。
教科準備室の前だった。


「中に入りなさい」


私は一瞬だけ間を置いてから
横に引くようにドアを開ける。

擦れる音がして部屋の空気がゆっくり動く。

棚に並んだ教材と、積まれたプリント。
見慣れているはずのものが今日は少し遠い。


数歩進んで立ち止まる。
振り返らない。

目の前にある鏡で
後ろにいる先生の姿が見えた。

先生が後ろ手でドアについている鍵に手を伸ばす。下に下げるだけの、簡単な金具。

その手つきが妙に落ち着いていて、もう何度も同じことをしてきたみたいに見えてしまう。


私は何も聞かない。
聞いていいのかも分からない。

息を吸って、吐く。
それだけの動作が少し重い。


ここは教科準備室で
今は昼休みで
そして学校の中だ。

そう思い出そうとしているのに
体のほうが先に逃げ場がないと理解している。


カチャッという鍵が閉まる音が
やけに大きく響いた。



榊ノ下さえ。

私は今からここで何者になるのだろう。





榊ノ下さえ、シーズン1 完

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
榊ノ下さえ、20日目。②

その日の放課後。
今日も元気にバイト中。

店の中は夕方と夜のあいだみたいな明るさで、オレンジ色の照明がテーブルの縁にたまっている。

私は忙しそうにカウンターの中を行ったり来たりしている。グラスにドリンクを注いで、オムライスにケチャップで絵を描いて「萌え萌えきゅん」と美味しくなる魔法をかける。

名前も何回か名乗る。

声の高さを少し変えて語尾をやわらかくして
笑顔の角度を決める。体は勝手に動く。

考えなくても、だいたいできる。
 

バイトの残り時間もあと3分の1ほど。

そう思ったところで

「新規様ご案内で〜す!!」

という声が聞こえた。


その瞬間だった。
視界の端に見覚えのある輪郭が入る。

背の高さ。歩き方。肩の角度。


補習をしてくれた先生だった。


頭の中が一瞬まっ白になる。

心臓が音を立てる。
でも体は止まらない。

トレイを持つ手も足も
ちゃんと動いている。

顔もたぶん笑っている。
変だと思われないように。

気づいていないふりを完璧にする。


私はゆっくり視線を外して
できるだけ遠いテーブルへ向かう。

ここなら大丈夫。
私はただのメイド。

そう思い込ませる。

……はずだった。


「じゃあ、あの子で」

指をさされたのは私だった。
胸の奥が、きゅっと縮む。

断ろうと一瞬だけ思うが口は動かない。
 

制服も違う。髪型も違う。
眼鏡もない。マスクもしてない。
声も、変えればいい。

私は一歩、前に出る。
 

いつもより少しだけ甘めの声を作る。

「おかえりなさいませ、ご主人様♡」

自分の声が少し遠くで聞こえる。
先生は少し緊張したみたいに背筋を伸ばした。 

「こういうところ、初めて来て……」
 
ほら、やっぱり。
バレてない。大丈夫。

胸の奥がほんの少しだけ緩む。


「そうなんですね!
 当店の説明をさせていただきますね!」

私はマニュアルを思い出す。


「当店、メイド喫茶となっておりまして、チャージ料が一時間──」

その説明の途中だった。
先生の視線が私の顔に移る。

ゆっくり。とても、ゆっくり。
そして頬の絆創膏で止まる。

「……頬、どうしたんですか?」

説明の言葉が喉の途中で消える。
時間が少しだけ遅くなる。

私は戸惑って、正直に言う。

「え……あ……ちょっと、油が跳ねちゃって」

先生は、小さくうなずく。


「そうか」

それから私の目をまっすぐに見る。

やめてくれ。
そのセリフだけは
言わないでほしい。


「……痕が残らないといいですね」

その声。
その間。
その目線。

昼間の学校の廊下とまったく同じだった。

私は「はい」とだけ答える。

昼と夜が完全に重なってしまった。


沈黙。

そして店の音だけが戻ってくる。
スプーンの音。笑い声。注文の声。

「あ、あのっ……」

私は少し早口になる。

「ちょっと店長に呼ばれたので、失礼します」

逃げるみたいに裏へ行く。
扉を閉めた瞬間に息が荒くなった。



どうしよう。
バイトしてるのバレた。絶対に。

さっきの目は気づいてた。
なんでここがわかったの?
どうやって見つけたの?

校則でアルバイトは絶対に禁止。
反省文。親が呼び出される。最悪、停学…。

いや、停学どうこうというよりも…

もし先生が誰かに話したら。
もしクラスの誰かが知ったら。

「榊ノ下さんってメイド喫茶で働いてるんだ」
「え、これ榊ノ下さんなの!?」

そんなふうに名前と顔が
一緒に広がっていったら。

せっかく目立たないようにしていたのに。
せっかくそういうふうに生きるのに慣れてきたのに。

前にも一度それで大変なことになった。

顔が知られて、声をかけられて
勝手に何かを決めつけられて。

あれは、うまく言えないけど
ちゃんと怖かった。

だからまた同じことになるかもしれないと思った瞬間、胃の奥が静かに冷たくなった。

胃が、痛い。


しばらくして恐る恐るホールに戻る。
先生が居た席はもう空いていた。

「さっきの、そこにいたお客さんは?」
 
同僚に聞く。


「お店間違えたって言って帰っちゃったよ」

「……そっか」

それだけ言う。


その日は具合が悪くなったことにして早退した。

コートを着て店を出る。


何度も後ろを振り返る。
誰か立っていないか。

誰か見ていないか。

駅まで。角を曲がって。家の前まで。
 

誰も、いなかった。


榊ノ下さえ、20日目。 
誰もいないのに安心はできなかった。



次回、最終回。

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
榊ノ下さえ、20日目。

榊ノ下さえ、20日目。


朝。今日はちゃんと起きた。

鏡の前に立つと頬の左側に小さな跡がある。
昨日のバイト中に餃子の油が跳ねたところ。

制服に袖を通しながら
少しだけ顔を近づけて鏡を見る。

赤みは薄くなっていた。でも、触るとまだ熱が残っている。昨日の夜の音や匂いがそこに小さくしまわれているみたいだった。

洗面台の端に置いてあったアロエを手に取り、新しいやつに変える。その上から新品のちいかわの絆創膏。

台紙からゆっくり剥がして
空気が入らないように頬に貼る。

指で端を押さえると少しだけ安心した。


家を出る。朝の空気は軽くて少し冷たい。
歩くたびに頬の端がわずかに動く。

今日は遅刻せずに無事に学校に到着した。
学校の廊下はもう人の声でいっぱいだった。

靴箱の音。誰かの笑い声。
ロッカーを閉める音。

その中を歩いていると
角を曲がったところで先生とすれ違った。

昨日、補習をしてくれた先生。
私は先に気づいたので立ち止まる。


「おはようございます」

先生も止まる。

「おはよう」

「昨日は、ありがとうございました」

少しだけ間が空く。 
  

先生の視線が私の顔に移る。
そして、頬で止まる。

「……頬、どうしたんですか?」

私は正直に言う。

「ちょっと、油が跳ねちゃって」

「そうか」

それから私の目をまっすぐに見て

「痕が残らないといいですね」
 

と言った。

私は「はい」とだけ答える。
それ以上、何も言うことがなかった。
 

そのとき、チャイムが鳴る。
廊下の空気が急に形を変える。

止まっていた人が動き出して
遠くでドアが開いて、足音が増える。

朝が続きを始める音。

「失礼します」

と言って、先生に軽く頭を下げる。
そのまま教室のほうへ走る。
  

廊下の窓から差し込む光が
床に細く伸びている。

階段を上って曲がって、教室のドアを開ける。

自分の席にたどり着くころには
胸の奥が少しだけ速くなっている。

息も少しだけ乱れている。
頬もまだ少し熱い。

床にカバンを置いて床に正座する。
世界がちゃんといつもの学校の形に戻る。


今日もバイトだ。

いつもの店。いつもの制服。
いつものメイドタイム。

今日もたぶん忙しい。


榊ノ下さえ、20日目。

その日のバイトが最悪な日になることを
私はまだ知らなかった。

 

榊ノ下さえ

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
榊ノ下さえ、19日目。②

その日の夜。

店の裏口から入ると忙しい音がしていた。食器の触れ合う音と、遠くの注文の声と、油のはねる音が重なっている。

靴を脱いで、更衣室へ走る。

エプロンを結びながら「遅くなってごめんね〜」と、誰にともなく言う。

みつきがいた気がする。たぶん、ぴょんぴょんしていた。耳とか尻尾とかが見えたような気がするけれど、よく見ている余裕はない。


すぐにホールに出る。

今日は餃子パーティーの日だった。
餃子がたくさん出る日。

私は餃子の焼き加減には自信がある。
だてにパンを何百個も焼いていない。
火と油と小麦粉には、体が勝手に距離を測る。

注文が重なっている。
ドリンク。デザート。そして餃子。

鉄板の前に立つ。
油を引いて、餃子を並べる。

ジュッ、という音。
ちゃんとした音。

と思った、その直後だった。

ぱちっと小さくはじけて、頬に熱が走る。


「あつっっ!」

思ったより大きな声が出て、自分でも少し驚いた。

すぐに、みつきが気づく。何も聞かずに裏から保冷剤を持ってきてくれる。動きが早い。判断も早い。犬みたいだ。

私はそれを受け取って、頬に当てる。


「ちょっとだけ、裏行ってくる」

みつきはうなずいて、そのまま鉄板の前に立つ。任せられる背中だ。

私は裏へ行く。
店の裏口の横にある植木鉢。

アロエ。

園芸用のハサミを取りだすと
金属の音が少しだけ鳴る。

一枚切って皮をむく。中の透明なところを頬に当てるとさっきよりずっと冷たい。

熱が、ゆっくり引いていく感じがする。


ポケットからちいかわの絆創膏を出す。
泣いているやつ。それを上から貼る。


店に戻ると餃子はちゃんと焼けている。
みつきもちゃんと立っている。

夜はそのまま、ほどけるみたいに流れていく。
 

笑顔を作って、注文を取って、皿を運んで、名前を名乗って。帰るお客さんに名刺を渡す。

ピンクのやつ。
店名と名前と、電話番号と住所。

受け取ると、だいたいの人が少しうれしそうになる。その顔を見るたび胸の奥で小さく音がする。

閉店後、更衣室で制服の上から厚手のコートを羽織る。紺色で少し重たい。肩がきゅっと沈む。丈は長めで制服の形が分からないように。外はもう遅い時間だから。


裏口を出る前に、また植木鉢のところに寄る。
アロエを二本、三本、ハサミで切ってポケットに入れる。

予備。今日は油がよく跳ねたから。


コートの前を閉じる。

夜の空気は冷たくて、
頬のところだけ少し熱い。


そのまま帰る。
制服じゃないみたいな顔で。



榊ノ下さえ、19日目の夜。

頬は少し熱くて、
ポケットは少し重い。



榊ノ下さえ

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榊ノ下 さえ
福岡ハレ系 放課後クラブ
榊ノ下さえ、19日目。

榊ノ下さえ、19日目。

放課後。教室には私と先生の二人だけ。

昼間はうるさかった場所なのに、今は音が少なくて机と椅子の輪郭がはっきりしている。

真っ赤なテストの補習。8点の続き。

黒板には数字が並んでいて
先生は淡々と説明している。

私は椅子に座ってうなずいている。
分かっているようで分かっていない。

だいたい、いつもそうなのだ。

そしてたった今、急に思い出した。

今日はバイトだった。3日連続の初日。

まずい。


スマホを膝の上に隠して
こっそり連絡する。

「すみません、少しだけ遅れます」

送信するとすぐに既読がついた。
胸の奥がほんの少し軽くなる。

でも軽くなったぶん
時間の重さが増えた気がした。

急がないといけない。

先生はまだxとかyとかの話をしている。
アルファベットが黒板に増えていく。

ここで私は、決めた。

地頭の本領を出す。
念能力を使う。

息を一つ、吸う。
心の中で唱える。

《地頭開脳式(フルオープン)》

頭の奥で何かのフタが開いたような気がした。

黒板の文字が意味ではなく形として見える。
そしてそれは全て正しいのだ。

私はノートも見ずに問題を書き写し
数字を置いて式を作る。

書く手が止まらない。
先生が途中で黙った。

少しだけ間が空く。

「……合ってる」

よかった。

何が合っているのかは分からないけど
合っているなら大丈夫。

そのままの勢いで残りも全部解く。
紙が埋まると時間が縮む。

先生が小さく咳をすると
「今日はここまででいい」と言った。

その声を聞いた瞬間
私はもう半分教室の外にいた。

立ち上がると、椅子が小さく鳴る。

「ありがとうございました」

そう言いながら鞄を肩にかける。

引き戸を開けた瞬間、風が入ってくる。
放課後の匂い。少しだけ甘くて、埃っぽい。

私は一歩、廊下に出る。

その拍子に鞄の横ポケットがわずかに開いた。

そこから小さな紙が1枚滑り落ちる。
白い角が見えて、くるりと回って床に落ちる。

乾いた音も立てずに。
私は気づかない。

視線はもうまっすぐ廊下の奥。
頭の中はどうやったら効率よく動けるかで
いっぱいいっぱいだ。

「榊ノ下」

先生の声がした気がする。

「何か落としたぞ」

でもちょうどそのとき、別の生徒の声が遠くでして、靴音も重なって廊下が少し騒がしくなった。

私は足を止めない。
階段を下りて曲がり角を抜けて
教室はもう見えなくなる。

落とした紙のことも。
先生の声も。

今の私には、もう追いつかない。




榊ノ下さえの足音が消えたあとも
教室にはしばらく空気が残っていた。

開けたままの扉から
廊下の気配だけが細く入り込んでくる。

先生は一瞬そのまま立っていたけれど
やがて諦めたように小さく息を吐いた。

そして落とした何かに近づいてしゃがむ。

床に落ちているのは小さなカードだった。

指先でつまみ上げると。
紙なのにしっかりしている。

少し厚みがあって角がきれいに丸い。
色はやわらかいピンク。淡くて、甘い色。

表には整った文字が並んでいる。

店名。その下に、名前。
さらに小さく電話番号と住所。

情報が順番通りに、きちんと並んでいる。
先生はそれを見てようやく分かる。

「名刺…?」

学生の持ち物にしては変だ。

もう一度、上から読む。

「メイドin福岡……」

それから名前のところで止まる。
少し間が空く。

そして、低くはっきりと声に出す。
 

「……木下、さえ」

誰もいない教室にその名前だけが落ちる。
もちろん返事はない。

窓の外で、風が鳴る。




その頃、私は校門を出て走っていた。

鞄がほんの少しだけ軽い気がした。
でも理由は分からないし、考えもしない。

バイトに遅れないほうが大事だった。



榊ノ下さえ、19日目。

そこにいるはずのない名前が
教室に残っていることをまだ知らない。



榊ノ下さえ

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