YES(イエス)グループ札幌 SATIN DOLL

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もか
YES(イエス)グループ札幌 SATIN DOLL
明日から、ちゃんとするから。(小説)

超適当文章です。ご了承ください。

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「……メンタルですかねぇ」

 
 医者の言葉に凛々はじわりと涙があふれたのを感じた。
 ーー泣くな、泣くな、泣くな。
 そう思っても一度あふれ出したそれは言うことを聞かない。
「薬を飲んで症状抑えることはできても、根本的な解決にはならないんで」
 一応だしときます?そう聞かれて凛々はこくんと頷いた。看護師さんが凛々にティッシュを差し出して、ありがとうございますと受け取る。
 
 ーーメンタル、だってさ。
 少し前から、体調が悪かった。症状的にも前の診断的にも低血糖だろうと思っていたから、深くは気にしていなかった。だけど、調子の悪さ、頻度はエスカレートするばかりで、今月バイトに行くのに何度目か分からないタクシー利用にお金の危機感を覚えた凛々は病院の受診を決めた。
 
 一番最初に適応障害ですね、と心療内科で言われたのは高2の頃だった。次に対人恐怖症のことを考えると軽度の鬱はあるでしょうと精神科で言われた。
 そして今回。頭痛、腹痛、手の震え、吐き気、めまい。これら全てが、メンタルからきてるのだ、と。
 甲状腺の病気の可能性も考えて血液検査もしときましょう、と言われたけれど、それよりも何よりも凛々にはショックが大きすぎた。
 
 メンタルひとつで、普通の生活さえ送れないのか、と。
 今回凛々は親に内緒で病院にかかった。自分の医療費がかさんでいることを知っていたのと、これ以上迷惑をかけなくなったから。
 凛々は「普通の」生活を送るために抗不安薬も、抗うつ剤も欠かさず飲んでいた。なのに、一体これ以上なにを求めると言うのだろう。
 ーー十分、やってきたでしょう?
 そう心の中で呟いた瞬間、また涙が頬を伝った。自分でも分かっている。働かなければいい。勉強を休めばいい。体調が戻るまで、何もせずに休んでいればいい。
 そんなことくらい、分かっている。
 でも、それができない。何もしない自分を許せない。誰かに心配をかける自分が許せない。働けない自分も、勉強できない自分も、病院に通い続ける自分も。
 全部が、情けなくて惨めで仕方がない。
 
 診察室を出ても、涙は止まらなかった。凛々は俯いたまま廊下を歩く。
 すれ違う人たちは、誰も凛々のことなんて見ていない。それなのに、泣いているところを見られている気がして、顔を上げることができなかった。
 会計を済ませ、処方箋を受け取る。
 その紙を見つめながら、凛々は小さく息を吐いた。
 また、薬が増える。腎臓にも肝臓にも負担がかかるのを、凛々は知っている。
 だけど、それがないとちゃんと、できない。
 
 凛々だって本当は知っているのだ。自分は「できているふり」をしているのだと。
 できていないと認めた瞬間に本当になにもできない自分になってしまいそうで、怖かった。
 
 病院を出る頃には、すっかり空は暗くなっていた。外の空気を吸っても、胸の奥に張りついた重苦しさは消えてくれない。
 凛々はスマートフォンを取り出した。通知がいくつか届いている。バイト先からの連絡。クラスライン。そして、家族からのメッセージ。
 どれも、今すぐ返さなければならないようなものではない。
 それなのに、画面を開いた瞬間、身体が強張った。
 ーー返さなきゃ。
 そう思う。ちゃんと返さなきゃ。ちゃんと働かなきゃ。ちゃんと勉強しなきゃ。全部、全部ちゃんとしないと。
 その言葉だけが、頭の中をぐるぐると回っていた。
 凛々は涙を拭って、スマートフォンを操作する。大丈夫。大丈夫だから。今日だって病院に行けた。薬ももらった。
 ーー明日からまた、ちゃんとすればいい。
 そう思おうとした。けれど、ふと指が止まる。
 明日から、何をどう「ちゃんと」すればいいのだろう。
 薬を飲んでも症状が出る。休めば休んだで、自分を責める。働けば身体がついてこない。勉強すれば頭が動かない。
 じゃあ、一体どうすればいい。
「……わかんないよ」
 小さく呟いた。誰にも聞こえない声だった。それでも口にした瞬間、堰を切ったように涙があふれた。
「……もう、わかんない……」
 人通りの少ない道を選んで、凛々は俯いた。泣いているところを見られたくない。心配されたくない。迷惑をかけたくない。
 だから、家に着くまでには泣き止まなければならない。家族の前では、いつも通りに笑わなければならない。
 ーー大丈夫だよ、って。
 そう言わなければならない。
 だって、自分が弱っていることを知られたら、また、心配をかけてしまうから、迷惑をかけてしまうから。また、自分が「できない人間」だと認めることになってしまうから。
 凛々は何度も涙を拭った。
 そして、震える手でスマートフォンの画面を閉じる。何も解決なんてしていない。
「……大丈夫」
 自分に言い聞かせるように、もう一度呟いた。
「私は、大丈夫だから」
 その言葉が嘘だと、自分が一番よく知っていた。

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